- 6月 13, 2025
小児気管支喘息の予防と対策〜アレルギー体質の子、肌荒れしやすい子は要注意〜
湘南辻堂こどもクリニックです。今回は、気管支喘息についてお話ししようと思います。昔は喘息で亡くなる方もいるほど怖い病気でした。現代では医学の進歩により、喘息で亡くなる方はほとんど見られなくなりましたが、放置すると、将来呼吸機能が低下することもあり、しっかり治療することが大切です。また、災害時には病状が悪化したり、治療に治療に難渋する事がありますので、喘息についてよく知っておくようにしましょう。
小児気管支喘息の診断
空気の通り道である気道に炎症が起き、それによって気道が狭窄してしまうことで、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーの呼吸音)や息苦しい、咳がなかなか止まらないなどの症状がみられるのが気管支喘息です。その時々の発作の状況、治療に対する反応など総合的に判断するため、喘息と判断することは簡単ではありません。一般的には、ゼーゼーを3回以上繰り返すとき、気管支拡張薬にしっかり反応して効果が見られる時、喘息と診断されます。
また、喘息と診断されても、3歳までに治るタイプ、6歳までに治るタイプ、6歳を過ぎても続くタイプなどさまざまです。どの子も、ゼーゼーは放置せずに早めに治療することが大切です。
はっきりとゼーゼーしていなくても、寝入り、明け方、運動時、大笑いした時などに咳き込みが気になるお子さんは、喘息の可能性がありますので、病院で相談しましょう。
喘息になりやすいのはどんな子?
喘息は6歳までに発症することが多いです。一旦発症してしまうと、子供自身もかなり苦しくなるし、看病する保護者の負担も大きくなります。そのため、発症予防と、早期治療介入が大切です。
もともとアトピー性皮膚炎や食物アレルギーがある子、家族に喘息の人がいる子が喘息になりやすいと言われています。また、女の子より男の子の方が喘息を発症しやすいということも知られています。
アトピー性皮膚炎など湿疹が起きていると、アレルゲン(アレルギーの原因物質)が体内に入り、アレルギーを起こしやすくなりますので、湿疹は程度が軽くてもしっかりと治療することで喘息予防効果が期待できます。
予防
炎症がある気道はとても敏感です。タバコの煙や、ダニやペットなどのアレルゲン(アレルギーの原因物質)、大気汚染物質、風邪や天候などいろいろなことが刺激になって、喘息発作が起こってしまいます。
喘息のお子さんがいるご家庭では、禁煙をお勧めします。
ダニ対策としては、エアコン掃除、フィルターの埃に注意し、カーテン洗濯、ぬいぐるみはなるべく置かずこまめに洗濯、カーペットは置かない、寝具のこまめな洗濯・天日干し・布団乾燥機・掃除機、掃除がけをするなどが大切です。
ペットアレルゲンを減らす対策としては、定期的にペットを洗う、屋外で飼うなどがありますが、どうしても病状が悪い時には、手放すことを検討しなくてはいけなくなることもあります。
また、風邪についてはある程度引いてしまうのは仕方ないのですが、かかりつけの病院を持つようにして、普段かぜを引くとどの程度咳が続くのか、ゼーゼーするのかしないのかなどを把握してもらい、早期発見・早期治療につながるようにしましょう(最近は便利なオンライン診療もありますが、聴診音が確認できていない点がデメリットだと思います)。鼻炎治療もしっかり行なっていた方が、良いです。
喘息を確実に予防できる方法はありませんが、できることから取り組むようにしましょう。
喘息の治療
喘息の治療には、2種類あります。発作時に使う症状を和らげるお薬(発作治療薬)と、発作を予防するための気道の炎症を抑えるお薬(長期管理薬)です。
喘息発作では気道の炎症により、気道が狭くなり、空気を吸えなくて苦しい状態になっています。発作治療薬を使うと一時的に楽になりますが、気道の炎症を抑える効果はありませんので、その場しのぎになってしまいます。発作治療薬は、メプチン(内服、吸入)、サルタノールインヘラー、ベネトリン吸入薬、ホクナリンテープなどがあります。
長期管理薬を使わないでいると、気道がだんだん固くなってしまい、将来の呼吸機能低下につながります。主な長期管理薬は、ロイコトリエン拮抗薬内服、吸入ステロイドがあります。発作の頻度や重さにより、お薬を選択、容量を決めていきます。
内服ロイコトリエン拮抗薬は、飲み薬なので、子供達にとって簡単に使用できるお薬なので、まずは内服で治療となることが多いです。モンテルカスト(商品名:シングレア、キプレス)、プランルカスト(商品名:オノン)の2種類があり、1日1回か、1日2回かの違い、剤型(粉、カプセル、チュアブル錠)、味の違いなどで使い分けることができます。
吸入ステロイドは、乳幼児はネブライザーを使うのが一般的です。

もう少し大きいお子さんでは、ネブライザーではなく、吸入薬にスペーサーという補助具をつけて吸入する方法もあります。

小学生くらいになれば、吸入薬単独での使用も可能なお子さんが多くなります。

吸入ステロイドは、気管支に直接作用するので、全身投与のような副作用は出にくく、安心して使っていただけます。ただ、吸入ステロイドがわずかに(1〜2cm程度)身長の伸びに影響を与える可能性も指摘されています。喘息発作を繰り返し、睡眠障害が起きて成長抑制することもありますので、病状を定期的に評価をして、吸入ステロイドは、いつ、どのくらいの量使うべきかを決める必要があります。
なかなか喘息が良くならないお子さんの中には、実はうまく吸入ができていなくて発作が起きてしまっている子も多くいます。そのままにせず、薬局や小児科で相談していきましょう。
また、発作が起こりにくくなるように体力をつける(適度な運動、バランスのとれた食事、十分な睡眠、規則正しい生活など)ことも大切です。
喘息の治療はいつ終わるの?
喘息症状がなく過ごせるようになったら卒業です。ただ、お薬を使っているから落ち着いているだけのことも多く、咳が止まったからといって薬をすぐにやめてしまうと、ぶり返すことがあります。
「飲み切ってください」「数ヶ月継続しますので薬がなくなったらまた受診して経過を見せてください」などと医師の診断を受けた際には、自己判断で中断せず、通院するようにしましょう。
ゼーゼーする時の緊急受診の目安は?
ヒューヒュー、ぜろぜろ、ゴロゴロなど息を吐く時に聞こえるのは、喘鳴(喘息の症状)の可能性があり、受診が必要です。
日曜・祝日・夜間などに急にゼーゼーし始めた時、かかりつけの病院を受診する前に、救急で受診した方が良い目安は、以下のとおりです。
・食事が全く食べられず(赤ちゃんでは母乳やミルクを飲まず)、半日以上おしっこが出ていない
・眠れないほど咳き込み、唇や顔色が悪い
・不機嫌で興奮している、苦しくて遊べない・喋れない・眠れない、呼吸が荒く早い
・遠くからでもゼーゼー音が聞こえている
・胸やのどの動きがいつもと違い、息を吸うときに肋骨がはっきりと凹む(陥没呼吸)、小鼻が開く(鼻翼呼吸)などの症状がある
最後に一言
喘息の診断と治療は、なかなか理解しくい面があり、病院としては真摯にご説明したつもりでも、ご家族と理解がずれていることに気が付くこともあり、ご説明が足りなかったかな、もっと違うご説明をすればよかったかなと反省することも多々あります。
ハンドブックなどもご用意してございます。ご不明点などある時には、ご相談ください。