• 5月 31, 2023

麻疹の流行が予想されます。ワクチンで予防しましょう。

湘南辻堂こどもクリニックの坪田伶那です。最近話題の麻疹について解説します。皆さんに知っていてほしい内容になりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

麻疹は感染力が強く、同じ電車の車両にいただけでうつります

空気(飛沫核)感染、飛沫感染、接触感染など様々な経路で感染を広げます。粒子が小さいためにマスクで完全に予防することも難しいです。

発症した人が周囲に感染させる期間は、症状が出現する前(発疹出現の3~5日前)から発疹出現後4~5日目くらいまでです。特に感染力が強いのは、最初に高熱と咳がではじめた時期(発疹が出る前)です。

妊婦さんは重症化しやすいこと、妊娠初期の感染では約3割が流産してしまうこともあり、注意が必要です。

出席停止期間

学校は解熱後3日を経過するまで出席停止となります。麻疹は、学校保健安全法に基づく第二種学校感染症に指定されており、学校をお休みしても、欠席扱いにはなりません。

1週間ほどつらい咳・熱が続き、入院になることも多いです

①カタル期(1〜4日目くらい)

麻疹ウイルスが体に入ると、10~12日後に、発熱や咳などの症状がでます。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感・不機嫌があり、咳、鼻みず、くしゃみ、結膜充血、目やにが現れて次第に強くなります。乳幼児では下痢、腹痛を伴うことも多くみられます。この時点では風邪症状と見分けがつきにくいですが、その後、麻疹に特徴的な症状であるコプリック斑(口のなかの頬の裏側にできる、1mm程度の白色の斑点)が出現して診断がつくことが多いです。

②発疹期(4〜8日目くらい)

コプリック斑が出る頃、体温は37℃程度まで一旦下がりますが、その半日後くらいに、再び39℃以上の高熱と発疹が出現します。発疹は耳の後ろ、首、おでこから出始め、翌日には顔、体、腕、2日後には手足の末端にまでおよびます。発疹が全身に広がるまで、高熱(39.5℃以上)が続きます。発疹ははじめ鮮やかな赤で、だんだんと暗い色調になります。結膜炎は改善することがありますが、咳は一層強くなります。

③回復期(9日目くらい〜)

合併症がなければ、発疹から3~4日後に解熱し、咳も次第に良くなり元気になっていきます。発疹は黒ずんで、しばらく残ります。麻疹の症状自体は7~10 日後には回復しますが、免疫力が低下するため、しばらくは他の感染症に罹ると重症になりやすく、また体力等が戻って来るには結局1ヶ月位を要することがあります。

*麻疹に対する免疫は持っているけれども不十分な人が麻疹ウイルスに感染した場合、軽症で非典型的な麻疹を発症することがあります。高熱が出ない、熱がすぐ下がる、コプリック斑が出現しない、発疹が一部しか出ないなどです。しかし、その感染力はあるので注意が必要です。

診断方法

症状から疑います。その時点で保健所に直ちに届出をして、発疹出現後7日以内を目処に検査を行います。
血液(EDTA血)、咽頭ぬぐい液、尿のうち、採取可能な検体(3点セット、できれば2点以上)でPCR検査を行い、確定診断をします。

予防方法はワクチン接種することしかありません

唯一の予防方法は、ワクチン接種によって麻疹に対する免疫をあらかじめ獲得しておくことです。2回接種することで、しっかり免疫がつきます。

子供は定期接種として、1歳になってすぐに1回、年長さんで1回の合計2回接種する機会があります。保育園や幼稚園に行っている場合は特に集団生活で広がってしまうことがあるため、定期接種の対象年齢になったら速やかに打つようにしましょう。0歳児クラスのお子さんはまだ麻疹のワクチンを打っていない年齢なので、1歳以上のお子さんや周囲の大人がワクチンを打つことで、守ってあげましょう。

なお、麻疹の流行地域では、6ヶ月~1歳未満の乳児にはワクチンの任意接種が可能です。6ヶ月未満の乳児は、母親から胎盤を通じて与えられた抗体があるため、ワクチンを打っていなくても心配しすぎることはありません(ただし、母親が麻疹にかかったことがなく、予防接種を2回受けていない場合には、赤ちゃんも母親も感染するリスクがあります)。

大人でも、親世代以上は1回しか打っていない人も多く、注意が必要です。これまでに2回打っていても、時間とともに抗体が落ちていることがあるため、抗体を調べて抗体が落ちている人は追加接種も検討が必要です。当院では大人の抗体検査・ワクチン接種も行なっておりますので、ご相談ください。

国内にはもともと麻疹は少ないのですが、今後も海外から持ち込まれることが多く予想されます。子供たちの健やかな成長のために、正しく恐れて、対策を取っていきましょう。

藤沢市からQ &Aも発表されています。参考にしてみてください。

https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/hokenyobo/kenko/kenko/kansensho/kansensho/documents/mashinippan.pdf

死にいたる合併症・後遺症もあり、とても怖い病気です

【中耳炎】一番多い合併症です。子供は自分で訴えることができないことも多く、耳から膿が垂れてくることで気がつかれることもあります。

【喉頭気管支炎(クループ)】呼吸が苦しくて呼吸器をつけることもあります。

【肺炎】比較的多い合併症で、死亡するほど重症になることもあります。

【脳炎】肺炎よりも頻度は少ないですが、死亡することもある重大な合併症です。発疹出現から2~6日後くらいに発症します。発症すると、10人中6人程度は完全に回復しますが、3人は精神発達遅滞、痙攣、行動異常、麻痺などの後遺症を残し、1人は死亡しますので、非常に恐ろしい合併症です。

【亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis :SSPE)】麻疹は、一旦治癒しても油断できません。7~10年後にSSPEと呼ばれる合併症を発症し、知能障害、運動障害を起こし、発症から平均6~9カ月で死亡します。麻疹ウイルスが神経細胞に残り続けることにより生ずるとされます。

身近に発症者が出た場合、速やかに対応すれば発症予防策が取れます

麻疹に接触後3日以内であれば、ワクチン接種で発症予防効果が期待できます(ただし、妊婦には接種することはできません)。

麻疹に接触後6日以内であれば、免疫グロブリンを筋肉内に注射することで発症予防もしくは症状軽減も期待できます。

発症したかも?と思ったら

麻しんを疑う場合、事前にお電話でお伝えください。お電話にて問診し、麻疹の疑いがある場合には、他の患者さんがいない時間帯での診察になります。状況により保健所へも連絡し、その指示も仰ぎます。ご受診の際は、周囲の方への感染を防ぐためにもマスクを着用し、公共交通機関の利用を可能な限り避けていただくようお願いします

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