• 4月 23, 2025

小児生活習慣病対策 〜学校健診で肥満の受診勧告を受けた方へ〜

湘南辻堂こどもクリニックです。藤沢市では、肥満度30%以上の児童では、保健指導として受診勧告をさせていただいております。このページをご覧の方は、勧告を受けて戸惑っている方かもしれないので、これから理由を書いていきたいと思います。子供自身も、ご家族も、ショックを受けることが多くありますが、何で受診した方が良いのか、ぜひ最後まで読んでみてください。

肥満って言われたのは、うちの子だけ?

2024年度の藤沢市学校健診では、肥満度30%以上は849名(男523名、女325名)、50%以上は219名(男137名、女82名)でした。肥満を指摘されることは、特別まれなことではありません。近年の食生活や子供の遊び方の変化から、肥満児は急速に増えており、日本だけでなく各国で問題となっています。

なお、受診勧告のあった合計1068名のうち、医療機関へ受診したのは13名だったそうです。

肥満の原因は?

肥満とは、体内に脂肪が過剰に蓄積している状態です。原因としては2つ考えなくてはいけません。

一つは、ホルモンの病気など何らかの疾患が元になっている場合。もう一つは、消費するエネルギーよりも摂取するエネルギーが多いことによって起こる、普通の肥満です。

クッシング症候群などの内分泌系の病気が見つかることもありますので、ぜひ一度受診していただきたいと思います。

肥満の何が良くないの?

肥満は、さまざまな健康被害が起きる原因となります。睡眠時無呼吸症候群(突然死のリスクになります)、高血圧、2型糖尿病、脂肪肝、脂質代謝異常症、痛風などが起きますし、動脈硬化が進んで成人してから脳梗塞、脳出血、くも膜下出血や心筋梗塞などを起こしやすくなります。多くの癌のリスクを高めることも知られています。

成長期だし、食べ盛りだし、仕方ない?

年長児の肥満は、大人の肥満に移行しやすく、中学生にもなると生活習慣が定着して体格がほぼ決まってしまうことから、元に戻すことも大変困難になります。小学校のうちに肥満対策を始めることが重要です。

何で肥満度30%で肥満と言われるの?

小児肥満症は、肥満度20〜30%で軽度肥満、30~50%で中等度肥満、50%以上で高度肥満と分類されます。

肥満が進むと、メタボリックシンドロームに進んでしまいます。メタボリックシンドロームは内臓脂肪に重きをおいて腹部脂肪から基準が決められている疾患です。学校健診の受診勧告を受けて、受診していただいた方のうち5人に1名がメタボリックシンドロームの基準を満たしていたそうです。

全員に腹囲を図ることは現在の学校健診で義務付けられていませんので、健康被害が出るリスクがある基準として肥満度30%で受診勧告としています。

病院に行ったらどういう検査・治療になるの?

当院ではまず、食生活、運動習慣などをお伺いします。食べ過ぎでもなく、運動も適度にしているのに肥満が進んでいくお子さんの場合、先ほども記載したような病気が隠れていないか、血液検査などを行うこともあります。また、単純肥満が疑われる子でも、合併症の有無の確認のために、血液検査を検討することもあります。

単純な肥満が疑われる場合には、子供の健康の維持のために、食事や運動について取り組めることを、一緒に相談していきます。小学生は成長期なので、大人のダイエットと違って「体重を減らす」のではなく、「同じ体重を維持」することを目標にすることが多いです。

食事内容は、まずは間食の見直しが大切です。ジュースやお菓子、アイスは量と時間を決めましょう。種類も、0カロリーのタイプにしたり、カロリー控えめのものにすると良いでしょう。食事は3食食べた方が良いのですが、揚げ物を減らす、野菜を多くとって満腹感を得る、大皿で食べるのをやめて一人分の量を決める、小さいお茶碗にして見た目多く見えるように工夫するなど、必要以上にエネルギーを摂りすぎないようにする工夫が必要です。

学校給食や学童のおやつをおかわりしているお子さんは、おかわりは控えるのもお勧めしています。(お腹が空いてどうしてもおかわりしたい時は、野菜やスープだけにしておく、お米などの炭水化物を一口でも減らすなど小さな工夫もしてみましょう)

運動は、子供によっては苦手意識がある子もいるので、生活の中で取り組めそうなことで十分です。お休みの日はお出かけして、たくさん歩く。犬の散歩に毎日朝晩行く。家でゲームする時間を30分少なくして、そのぶん公園で遊んだり、自転車に乗って出かけたりするなど。雨の日にはゲーム(任天堂switchのリングフィットアドベンチャーなど)で、体を動かすのもお勧めですよ!

何ヶ月かおきでも、長期休みの時だけでも、医療機関を受診して、肥満度や合併症を確認することは、健康への意識として大切なモチベーションになります。病院受診の日が近いからちょっと食べるの控えよう、毎日体重を測ろう、血液検査になっちゃうと嫌だからダイエット頑張る、といった意識の芽生えこそが、一番の治療になります。

また、心理的なストレスから過食になっているお子さんは、漢方などの治療を併せて行うこともあります。

最後に一言

肥満の受診勧告があると、家で食事や運動を気をつけてくれているご家庭も多くいらっしゃいます。ただ、努力した割に報われない、増えていく一方になることも多いです。これは、体内リズムが、脂肪を蓄える方向に傾いているせいなので、しばらくの辛抱が必要です。ご家庭や、子供一人だけの努力ではどうにもならないことが多いので、ぜひ病院で一緒に相談していきましょう。

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