• 6月 12, 2025
  • 6月 13, 2025

2025年6月現在、麻疹が市内で発生しています。症状の経過をよく知っておきましょう。

湘南辻堂こどもクリニックです。

麻疹の注意喚起としてブログを書きました。

麻疹の原因

麻疹ウイルスによって起きる感染症です。空気感染をする、感染力の高いウイルスです。

潜伏期間

体にウイルスが入ってきてから、10〜12日経った頃に症状が出てきます。

症状

38度以上の発熱目やにを伴う結膜炎症状から始まります。(この時点ではただの風邪か、麻疹なのか診断するのは難しいです)

発熱が2〜4日続いたのちに、麻疹の特徴的な発疹が出てきます。から始まり、2、3日かけて体、手足に広がります。口腔内(頬粘膜)にコプリック斑という白いぶつぶつができるのも特徴です。

発疹とともに、咳や鼻水、目やになどの症状が悪化し、発熱は時に40度まで上がります。

発疹が全身に広がる数日の間は発熱が続きますが、その後症状は改善します。

重症化すると肺炎や脳炎を引き起こすことがあります。

また後述しますが、感染から回復しても、数年から数十年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することがあるのが、麻疹ウイルスの怖いところです。

治療

有効な特効薬はありません。対症療法で経過をみます。

SSPEとは

麻疹ウイルスが脳内で持続感染、脳に炎症を起こし続ける病気です。麻疹に感染してから、5~10年はなんともなく元気にすごした後に発病します。発症すると、数月から数年の経過で神経症状が進行します。 

初めは軽度の知的障害、性格変化、脱力発作、歩行異常などの症状が見られます。体がビクッと動く不随意運動も周期的に見られるようになります。知能、運動の障害は徐々に進行し、歩行不可能となり、食事摂取も次第にできなくなってきます。この時期には体温の上昇、唾液、発汗異常などの自律神経の症状が見られるようになります。最後には意識は消失し、全身の筋肉の緊張も強く、手足を動かすことができなくなります。

普通のウイルス感染と異なり、長い潜伏期間の後に発症しますが、なぜ、このように長い潜伏期間の後に発病するのかということについてはまだ十分わかっていません。

日本にSSPE患者さんは100人くらいとされています。発症数は以前は年間10~15人くらいでしたが、麻疹ワクチンの普及以後は減少し、この10年間では新たな発症者はほとんどいません。発症率は麻疹に罹患した人の数万人に1人とされています。

1歳未満に麻疹に罹患した場合、免疫機能が低下している状態(ステロイドホルモン、免疫抑制剤、抗がん剤などを長期に使用しているような状態)で麻疹に罹患した場合の発症が多いです。男女比は1.6:1くらいでやや男児に多いです。学童期で発症しやすいです。

治療法はありません。

予防

MR(麻疹・風疹)ワクチン接種が有効です。1回接種で95%の方が、2回接種で99%以上の方が免疫を獲得できます。

日本では、1歳と年長さんで定期接種となっています。公費の時期を逃してしまった方は、自費で接種可能です。麻疹流行の報道があると、一時的に打ちたい方が増えるため在庫が少なくなることがあります。普段から予防意識を高めておくと良いでしょう。

生ワクチンですので、他の生ワクチンを打ってから1ヶ月は間隔をあける必要があります。また、妊娠中の方は接種できません。 

子供にワクチンは一つも打たせないという方針のご家庭も、お子さんの健康のために、今一度ご再考いただければと思います。

麻疹を疑ったらどうしたら良い?

周囲に麻疹の発症者がいて、すでに健康観察を保健所で受けている方は、その指示に従ってください。

発熱とめやに、咳鼻水が出ている場合で、さらに3〜4日目で発疹やコプリック斑が出現してきたらまずは電話で症状をお伝えいただいてからご受診の時間帯・受診方法などをご相談させていただきたく思います。

麻疹が疑われる場合、保健所と協力して精密検査を行います。咽頭ぬぐい(のどをぐりぐりする検査)、血液検査、尿検査を行うことが多いです。また、感染拡大を防ぐために接触者調査(いつ、どこに行ったか、同時刻に同じ場所にいた人を探すなど)を行います。

1歳を過ぎてMRワクチンをすでに打ち終わっている方は、相対的に発症リスクが高くないと考えて良いのですが、0歳のお子さんや、ご両親の方針でワクチン未接種のお子さんは注意が必要です。

なお、全国での麻疹発生件数は、令和3年6名、令和4年6名、令和5年28名、令和6年45名、令和7年は6月時点ですでに129件発生しているそうです。

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