- 5月 16, 2023
- 5月 17, 2023
HPV(子宮頸がんワクチン)のお話:小学校6年生~高校1年生相当の女の子の定期接種
こんにちは!湘南辻堂こどもクリニックの坪田伶那です。
今回は、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン(子宮頸がんワクチン)のお話をしたいと思います。
HPVとは
ごくありふれたウイルスで、性交渉を経験する年頃になれば、男性も女性も、多くの人はHPVに感染します。HPVに感染した人のうち一部で、子宮頸がんに進行します。特に進行が早いのが、16型と18型で、ワクチンで予防できるタイプです。
子宮頸がんは毎年1万人がかかり、3000人が亡くなる、命に関わる病気です。20〜30代の若い女性に増えています。小さいお子さんがいる女性に多く発症するため、マザーキラーとも呼ばれています。
HPVワクチンの歴史
2006年に欧米で生まれ、使われ始めました。 日本では、2009年10月にワクチンとして承認され、接種が始まりました。 さらに2013年4月に定期接種となりましたが、その2か月後にワクチン接種後の原因不明の慢性疼痛などを伴う有害事象報告があり、一時的に”積極的な接種勧奨”が中止されました。その結果、HPVワクチンが普及した先進国では子宮頸がんの発生がかなり減っている一方、日本だけがこのワクチンの接種率が低く、子宮頸がんの発生と死亡者数が増え続けて、世界的に非常に心配されてきました。
その後の調査で、慢性疼痛などを伴う有害事象は、ワクチン成分によるものではなく、針を刺した痛みの刺激や不安(心身の反応)によるものとの見解が発表されたことを受け、2022年4月から約9年ぶりに、自治体から接種対象の女性へ予診票などを送る積極的勧奨が再開されました。接種再開にあたり、接種後に生じた有害事象に対する相談・診療を行う専門機関が全国的に整備されました。
2023年4月からは、従来のワクチンよりも、さらに効果的な9価ワクチンが定期接種で接種可能となりました。
定期接種の対象となる年齢
小学校6年生~高校1年生相当の女の子です。初めての性交渉の前に打つのが、最も効果的です。
*HPVワクチンのキャッチアップ接種について:積極的な勧奨の差し控えにより接種機会を逃した方は、公平な接種機会を確保する観点から、不足回数分について、公費による予防接種(キャッチアップ接種)を受けることができます。現時点では、平成9年4月2日から平成19年4月1日までに生まれた方で、HPVワクチンの接種を完了していない女性が対象です。キャッチアップ接種期間中に定期接種の対象から新たに外れる19年度生まれの方についても順次キャッチアップ接種の対象者となります。
使用できるHPVワクチン
3種類あります。
ワクチンの種類 | 予防するHPVの型 |
---|---|
サーバリックス(2価HPVワクチン) | 16型、18型 |
ガーダシル(4価HPVワクチン) | 6型、11型、16型、18型 |
シルガード9(9価HPVワクチン) | 6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型 |
16型と18型が子宮頸がんの原因の50~70%を占め、31型、33型、45型、52型、58型まで含めると、子宮頸がんの原因の80~90%を占めます。
6型と11型は尖圭(せんけい)コンジローマの原因となるものです。尖圭コンジローマとは、性器や肛門のまわりにイボ(カリフラワー状)ができる病気で、自覚症状がないのが特徴です。再発しやすく、完治が難しいと言われています。
接種回数・間隔
使用するワクチンによって異なります。
命と健康を守るために
子宮頸がんは、早く見つけることができれば比較的治療しやすいといわれていますが、がんであることには変わりがなく、働き盛りの、あるいは妊娠中や子育て中の女性から、がんが発見されれば、心身に大きなダメージを負います。また、症状があまり出ないため、見つかったときには致命的なことも多いです。
ワクチンで予防することと同時に、ワクチンで防げない型の発がん性HPVもあるため、ワクチン接種後も20歳を過ぎたら子宮頸がん検診を定期的に受けることも、忘れないようにしてください。