• 6月 13, 2025

肌荒れ〜アトピー性皮膚炎について

湘南辻堂こどもクリニックです。今回は肌トラブルが続く病気、アトピー性皮膚炎についてお話ししたいと思います。

アトピー性皮膚炎の定義・疾患概念

アトピー性皮膚炎とは、「かゆみのある湿疹が、慢性的に(赤ちゃんであれば2ヶ月以上の期間、1歳以上なら6ヶ月以上の期間)良くなったり悪くなったりを繰り返す病気」です。

乳児期から発症し小児期に改善する人も多くいますし、一部の人は成人まで持続します。学童期〜20代に重症な方が増えることも知られています。多くの場合小児期に発症しますが、稀に思春期以降で発症することもあります。発症に男女差はありません。

成長とともに湿疹の出やすい場所は変わっていきます。乳児では顔や首、頭によく現れ、ひどくなると胸や背中、手足に広がります。幼児・児童では首、お尻、肘の内側や膝の裏に多く見られます。思春期・成人になると顔、首、胸、背中など、主に上半身に現れやすくなります。

アトピーを発症する人は、家族に気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持つ人がいることが多いです。

皮膚ではどのような異常が起きているのか

正常な皮膚は、バリア機能が保たれており、外部からの刺激(アレルゲンなど)が入ってこないようになっています。皮膚炎があると、このバリア機能が低下しているため、外部からの刺激が簡単に皮膚の中に入ってきてしまいます。

外的刺激が加わると、皮膚内部で痒みや炎症を起こす物質が増えます。

痒みが起きて掻きこわすと、皮膚が壊れて、さらに炎症が起きやすい肌の状態を作ります。

発症因子・悪化因子

・きちんと外用薬を塗れていない(塗る範囲、塗る頻度、塗る量)

・日常生活での汗、衣類の繊維(特にウール)、食事内容、飲酒、温度や湿度といった環境因子

・精神的ストレス

・風邪を引いた時は肌が敏感になって荒れやすくなる、熱のために入浴できなかったことによる悪化もある

など

鑑別疾患

・接触皮膚炎:俗にいう“かぶれ”で、左右対称ではなく一部分に発症する。

・脂漏性皮膚炎:頭皮や眉毛部・眉間,額・鼻などに黄色いカサブタができて、周囲が赤くなる。

・単純性痒疹:虫刺されなどの一部分にできる痒いできもののこと。

・皮脂欠乏性湿疹:皮膚の乾燥によって生じる湿疹。保湿剤を塗れば改善する(市販薬より処方薬の方が保湿力が高い)。

・汗疹:俗にいう“あせも”で、背中、肘・膝裏、首、わきなどにできやすい。

・手湿疹:俗にいう“手あれ”で、物理的な刺激で手に湿疹が生じる。美容師、調理師、医療従事者、主婦など、水仕事の多い人で発症しやすい。

・疥癬:高齢者福祉施設や病院などでの感染が多い、ヒゼンダニの寄生による疾患。ものすごく痒い丘疹が体、手足に赤いふくらみができる。手のひらや指間などに線状のカサカサ(いわゆる疥癬トンネル)がみられる。

治療は重症度に応じて行います

治療の主体はステロイド外用薬です。

範囲は狭くても、盛り上がりができているような重症な湿疹には強めの外用、
範囲は広くても、赤み程度の軽度の皮疹には弱い外用を使用します。

メディアなどの影響で、「ステロイドはとても怖いもの」というイメージをお持ちの方も多くいらっしゃいます。実はステロイドという物質は、自然に体内でも作られるもので、誰でも体内に持っているものです。ステロイドは上手に使えば良薬ですが、使い方を間違えると、副作用が出てしまうこともあるため、そういう意味では「怖い」お薬かもしれません。医師や薬剤師の指導を守って使用していただきたいと思います。

また、新しいアトピー性皮膚炎の治療薬として、ステロイドではない外用薬コレクチム、モイゼルト、プロトピックなどの外用薬もよく使われるようになっています。ステロイド外用薬で状態が落ち着いてきたら、切り替えていきます。ステロイド外用薬はよく効くお薬ですが、長期使用による副作用も心配されますので、状態を確認しながら切り替えを順次お勧めしています。

ステロイド外用薬がどうしても怖くて使えない方には、最初からこれらの新しい治療薬をお勧めすることもあります(年齢制限があり、モイゼルトは生後3ヶ月から、コレクチムは生後6ヶ月から使用可能です)。

治療の目標

治療の最終目標は、症状がないか、あっても軽くて、日常生活に支障がなく、薬物療法もあま
り必要としない状態に到達し、それを維持することです。
日常生活で支障があるかどうかは、以下の質問項目の状況で支障があったかどうかを参考に考えていただくと参考になります。

1.ここ 1 週間,皮膚のかゆみや痛み(ひりひり,ぴりぴり,ずきずきするような)を感じましたか
2.ここ 1 週間,皮膚の状態のせいで,恥ずかしく思ったり,まわりの人の目が気になったりすることがありましたか
3.ここ 1 週間,皮膚の状態のせいで,買い物や家事,家の仕事をするのに支障がありましたか
4.ここ 1 週間,皮膚の状態のせいで,服装に影響がありましたか
5.ここ 1 週間,皮膚の状態のせいで,人付き合いや自由時間の過ごし方に影響がありましたか
6.ここ 1 週間,皮膚の状態のせいで,スポーツをするのに支障がありましたか
7.ここ 1 週間,皮膚の状態のせいで,仕事や勉強がまったくできないことがありましたか

肌荒れが続くと、アレルゲンが体に侵入して、感作が起きることで、アレルギー疾患を次々に発症してしまうことが知られています。

治らない肌荒れは、受診をお勧めします。


湘南辻堂こどもクリニック 0466-90-3131 ホームページ